今回は、通常の(裁判員裁判でない)刑事裁判手続が具体的にどう進められていくのかについて、
簡単に説明したいと思います。
依頼者の方は、初めて刑事裁判の当事者となってしまった方がほとんどです。
このため、私は、どんな流れや動きで進んでいくのか、全体像を簡単に説明するようにしています。
以下の記述も、依頼者向け(被告人向け)に記載しています。
(なお、以下は、争いがない事件における一般的な流れです)
<前置き1>
裁判所の法廷には、正面に裁判官席、その両脇に検察官と弁護人の席があります(コの字型)。
多くの場合は、正面向かって右側が弁護人の席ですが、逆になっていることもあります。
机の前に長椅子(ベンチ)が置かれていれば、そちらの机が弁護人側となります。
(六法全書が置かれていない方の机が弁護人側の席という見分け方もできます。)
身柄を拘束されていない依頼者には、一緒に法廷に入ってもらって、
「弁護人の横の席」又は「弁護人の机の前に置かれた長椅子(ベンチ)」に座ってもらいます。
<前置き2>
裁判官が法廷に入ってきたら、全員で立ち上がって一礼をします。その後、着席します。
裁判官が「それでは開廷します」などと発言します。
<具体的な流れ>
1,冒頭手続
(1)人定質問
裁判官から「被告人は証言台の前へ」と言われるため,証言台の前に進みます。
その後,名前,生年月日,職業,住所,本籍を尋ねられて答えることとなります。
(自分の本籍が分からない方は、事前に確認しておくとスムーズです)
裁判官が「今から検察官が起訴状を読み上げますから、その場で聞いていてください」
などと言います。
(2)起訴状朗読
そのまま(被告人はその場で立ったままであることが多い)
検察官が起訴状を読み上げます。
(3)黙秘権告知・罪状認否
裁判官が被告人に対し、
「あなたには黙秘権があるので、質問に答えなかったからといって,
不利益な扱いを受けるということはありません。答えた内容は裁判の資料になります。」
「その上で,いま,検察官が読み上げた起訴状の内容について,
どこか間違っているところはありますか?」
などと尋ねます。
これに対し、間違っているところがない場合(争いがない場合)は、
「間違いありません」などと答えます。
(間違っているところがある場合は、当然、「間違っています」などと答えます。)
その後、裁判官が弁護人に対し、「弁護人の意見は」などと尋ねますので、
弁護人は、「被告人と同様です」(争いがない場合)とか、
「~に誤りがあります」「自首が成立します」などと答えます。
2,検察官立証
(1)冒頭陳述
検察官が考える犯罪事実(犯行)について説明します。
(2)証拠調べの請求
検察官が
「以上の事実を立証するため,証拠等関係カード記載の証拠の取調べを請求いたします。」
などと発言します。
(3)弁護人の意見聴取
裁判官が、証拠調べの請求に対する弁護人の意見を尋ねます。
(4)証拠決定
裁判所が検察官請求証拠のどれを証拠にするのか決めます。
(5)証拠調べの実施
検察官が証拠の概要を述べ、裁判所が証拠を取り調べます。
証人がいる場合には、証人尋問が行われます。
3,弁護人立証
(1)冒頭陳述
(情状面のみの立証予定だとほぼ省略されることが多いように思います。)
(2)証拠調べの請求
弁護人が「証拠調べ請求書記載の証拠を請求します」などと述べます。
(3)証拠調べの請求に対する検察官の意見
検察官が書証に「同意します」とか証人に「しかるべく」などと述べます。
(4)証拠決定
弁護側の証人(情状証人含む)がいる場合は、証人尋問が行われます。
4,被告人質問
被告人は、弁護人、検察官、裁判官から順番に質問を受け、回答します。
5,論告・求刑
検察官が被告人にどのような刑罰を科すべきか意見を述べます。
6,弁論
弁護人が弁護意見を述べます。
7,最終意見陳述
裁判官から「被告人は証言台の前に来てください」と言われます。
証言台の前に立ったら「被告人は最後に言いたいことはありますか?」と尋ねられます。
これで終了です。だいたい1時間以内に終了することが多いでしょう。
この後は判決の期日を決めることが多いですが、即日判決となる場合もあります。
判決の日は、出頭した上で、判決を受ける(聴く)ことになります。